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その4 換気について・上

換気扇を回しているはずなのに全然吸い込んでくれない。換気扇が壊れてるのかしらという経験はありませんか?こんなとき慌てて修理をお願いしてはいけません。換気には極めてシンプルな原則があるのです。それは「入ってこなければ出ていかない」。一般的に換気扇は中から外に一方的に空気を排出しますがその際に換気扇が持っている排風能力量(空気を送り出す量)と同じだけの量の空気が外から中に入ってきてないとどれだけファンが一所懸命回っても中の空気は出て行きません。普通の住まいの場合一番排風量の大きいのはキッチンの換気扇だと思いますがそれは調理によって生じるガスや水蒸気・油脂を排出する必要があるからです。特に酸欠には気をつけなければなりませんので換気扇の排風能力に見合った新鮮な外気を入れる必要があります。古い住宅ですと換気扇を回せば家中の隙間から外気が吸い込まれてなんとなく換気されるのですが(但し冷暖房効率が悪いです)近年ではアルミサッシやせっこうボードなどの新建材の普及によって住宅の気密性は格段に高まっており排風量に釣合わせるには外気取入れの給気口を設ける必要があります。キッチンの壁をよく見ると手で回して開け閉めする給気口がないですか?換気扇を回しても換気されていないと感じる時はこの給気口が閉じているかまたは設置されていないかだと思います。本来キッチンには法的に設置が義務付けられているので必ずあるはずなのですがリフォームでキッチンの間取りを変えたりすると設置を忘れてしまうケースもあるようです。もし万が一給気口が見当たらない場合は窓をほんの少し3センチ程度開けるだけでも同じ効果はあります。この場合は冷暖房の時期は効率に影響しますが換気にとってはできるだけ換気扇から遠い窓の方が良いです。この話はもう少し説明が必要なので次回も続けます。


# by uegaito | 2020-09-15 17:33 | 建築

その3とツッパリと力板

その3 ツッパリすぎにご注意

壁に関する話をもう一つ。ここに棚があったらなあということで重宝するのが突っ張りタイプの棚。この突っ張り棚、基本的な仕組みとしてはネジの力で伸び縮みするグリップが先端に取り付けられていてグリップを回すことで生まれる力で文字通り両側の壁に突っ張って取り付けられます(「ジャッキ式」とも呼ばれます)。この時グリップの回し具合が甘いと突っ張り力も弱くちょっとした重さで落っこちてしまいますのでついついひねる手先に力がこもって思いっきり突っ張らせてしまうものです。一本棒ならまだしも2本を組み合わせた棚タイプだとまず1本目を捻って突っ張らせよしこれで大丈夫しっかり留まったと思って2本目を捻ったらなぜか1本目が緩んでしまいもう一度締め付けようと捻るともう片方がまた緩むなんて経験ないでしょうか。ええいもう!なんてここで短気を起こすと壁に穴が開きかねません。前回のお話しを思い出してください。最近の住宅の内壁は骨組み(下地)に石こうボードを張り付けてでできていることが多いのでしたよね。ボードは厚み1cm程度の板ですので裏側に下地がないところを強く押すとたわみます。さらにボードの中身はボソボソした石こうが板状に固めてあるので面に強い力が加わると凹んでしまいます。力は同じ大きさでも小さい面にかけるほど強く作用します。ネジの力で突っ張る棒の先端がボードに与える力も作用面が小さいので意外と強い力になりボードを凹ませてしまうため緩んだように感じるのです。突っ張り棚は緩んだままなんとなく留めた状態だとちょっと重たいものを置いただけで棚ごと落っこちてしまい大変危険ですので捻っても捻ってもうまく取り付けられない場合は無理をせず棚の2本の突っ張り点と壁との間に合板などを挟んで力のかかる面積を大きくしてみてください。目安は棚が壁に当たる長さ+6cm高さ5cm厚み1cm程度。適当なサイズの板が見つからない場合はホームセンターで相談すると必要なサイズにカットしてくれる場合もあります。目立って気になるときはラッカーなどで壁と同じ色に塗ると良いでしょう。


# by uegaito | 2020-09-14 19:22 | 建築

その2 なんで画びょうが効かないの?

みなさんのお宅には、毎年つけているカレンダーのかけ穴のまわりに画びょうを刺した痕だらけの壁ありませんか?なんでこの壁のカレンダーはちょっとした力で落ちるのかしら、しっかりしなさいよこの画びょうっなどと画びょうに怒ってはいけません。画びょうに根性がないからなのではなくそういう壁はおそらくせっこうボードを下地に使った画びょうが留まりにくい壁なのです。防火性能や施工性の良さなどから近年では住宅の内壁は柱の外側にせっこうボードを張り付ける構造が一般的になっています。特に都市部では住宅といえども準耐火構造や耐火構造といった高い防火性能が必要とされることも多いためほとんど内壁や天井はこれを下地として壁紙や塗装で仕上げられていることでしょう。このせっこうボード(以下「ボード」と略します)その名の通りせっこうを固めて両面に紙を貼り板状にした建材です。表面の紙を剥がすと中身はぼそぼそとしておりそれ自体にビスや釘を打っても抜けてしまいます。壁や天井を作るときは骨組みとなる柱や間柱胴縁や野縁といった材にボードの厚みよりずっと長いビスで留めつけます。ですのでボード下地の壁に強い力をかける必要のあるもの例えば手すりや吊り戸棚などを取り付ける場合はボードではなくその内側の骨組みにビスで打ち付けるかその範囲のボードを合板などのビスが効く材料に替えます。さてようやく本題。それほど重たくはないけど壁を飾りたいもの掲示したいものはたくさんありますね。カレンダー程度の重さでしたら細い釘を異なる方向に3本刺して留めつけるボード専用のフックがあります。もう少し重たい例えばガラス入りで額装された絵画などの場合はボードアンカーと呼ばれる専用のビスを使います。いずれもホームセンターで手に入り手軽に取り付けられるものです。


# by uegaito | 2020-09-13 22:46 | 建築

その1 住まいのメンテナンスを始めましょう

食事のたびに歯を磨くと虫歯に罹りにくくなるように住まいも色々と手入れをしてあげると機嫌よく長持ちします。手入れをすることを「メンテナンス」と言いますが住まいのメンテナンスにはいくつかの観点から次のように分けて考えられます。一つは「日頃から簡単に自分でできること」と「専門業者にお願いしないとできないこと」もう一つは「予防」と「修繕」です。先の歯の話に例えると歯磨きは「自分でできること」で虫歯の「予防」ですが罹ってしまった虫歯を削って詰め物をするのは「歯医者さんじゃないとできない」治療すなわち「修繕」というようなことです。今日からこの連載コラムでは、住まいのメンテナンスにまつわるこれらのあれこれを一級建築士としての専門的な視点からお話しします。まず前半は予防のために知っておきたい基礎知識と対処についてお話しします。知らずに不具合と思ってしまっていることも原理を知ればうまく使いこなすことができます。なんでうちの壁は画びょうを刺してもすぐ抜けるの?どうして換気扇回してもうまく換気されないの?などなど。続いて住まいの心配事を解決するお話と自分でできる修繕の方法などをお話ししたいと思います。現代ではちょっとしたお手入れや掃除のテクニックなどはスマホ片手にちょちょいと検索すれば様々な情報が簡単に得られますのでそれで解決できることはネット情報にお任せしたいと思いますが一方で日頃の暮らしでふと見つけた住まいの不安に対してネット検索ではうまく解決できないこともあります。よく相談されるのがひび割れです。このまま放っておいて大丈夫なの?壊れちゃうんじゃないの?といった不安な現象について専門的な知識で説明し解決していきたいと思います。


# by uegaito | 2020-09-09 16:04 | 建築

今年の初めからある新聞で一般向けに住まいのメンテナンスについて隔週連載してました。新聞社からブログへの転載を了承いただきましたので、これから17回にわけてこちらに掲載します。後々まで見やすいようにまずは目次です。

8 お部屋の空気を上手に動かす・下
9 エアコンの効率を落とさない
10 内装のひび・上
11 内装のひび・下
12 外部のひび・上
13 外部のひび・下
14 電気設備
15 排水設備
16 外壁や屋根
17 専門家への相談

# by uegaito | 2020-09-09 16:00 | 建築
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