2月は大学では4年生の卒業設計講評会ラッシュです。僕らが学生の頃からは考えられないけど今は非常勤やゲストの講師を大勢呼んで大きな会場で公開講評会をする大学がほとんどです。ここだけ見ても今の学生はとても恵まれているよね。で、僕も非常勤講師をしている関係で芝浦工大建築工学科と日本工大建築学科の2つでお呼ばれして行ってきました。実は去年から少々気になる事象が起こってまして、ディプロマに当たって設計を選択する学生ががくんと減っているのです。今年はその傾向に拍車がかかってまして、芝浦工大では学年125人中なんと19人!。設計が建築学科の花形だったのはいつの時代だって感じですね。聞くと他大学でも軒並みそうらしい。設計の道がさして魅力的でなくなってしまったのか、大変な割には浮かばれないと思うのか、とにかく大学生活の総決算を設計で締めくくろうと思う学生がこんなに少ないというのは明らかに斜陽だよな。一方で出来映えはどうかというとこれはまあ今年だけ特別ダメってわけでもなく逆に少数精鋭ということもなく、取り組んだ学生はみんなまじめに問題に向き合ってきっちり設計していました。ただ気になったのが、今年の学生はテーマがとても社会性のある、現実的で身近な問題、シリアスな題材が多かった割にテーマ負けじゃないかと思うほど建築がこぢんまりしてたということ。拘置所や崩壊する地域コミュニティ、増える中高年単身者の暮らしを扱ったり、果ては自分自身がいつホームレスになるかわからないなどなど。それゆえ決して壮大な風呂敷を広げたり素っ頓狂な夢物語というような作品はほとんど無いわけ。もしかすると彼らは希望を持って入学した1年生から、2年生に上がろうとする春休みにちょうど3.11を経験したからなのか、建築に過度な期待感を持たないような、ちょっと覚めた提案になっているような気がした。というよりテーマがシリアスな分だけ逆説的に建築の無力さを明らかにしたような皮肉さすら。困ったね。先を行く者が明るい未来を示せていないんだろうな。あ、また暗くなっちゃった。