修業時代よく親分から聞かされた言葉、建築家は業者ではない。スタッフだった時は正直そんなにピンと来てなかったんだけど、こうして独立して10年そこそこ看板を張ってきた今となっては、これはちゃんと主張していかないといかんとつくづく思うようになったね。業者ってのは別に差別的に言っているわけではないんだけど、スタンスとして、お金を払う人の方のみを向いて常にお伺いを立てる仕事の仕方をしないといけないわけで、建築家がそれをやっちゃっていいのかってことだと思うんですよね。設計を生業としてその売上で生活しているのだから業者じゃないのなんて実態の話をしてるんじゃなくて気持ちの問題を言ってるわけです。お医者さんが患者の言うとおりに診断して処方するかといったらそんなわけないでしょうってたいていの人は答えるでしょ。お医者さんのことを業者さんなんていう人いないってこと。プロフェッションは業者ではいけないんだと思うんです。あまりここで言葉尻の突っ込みを入れないでね。設計入札以外の選定方法がなかなか定着しないのはこの辺の認識のズレが大きいんじゃないかと思うんだよな。別に尊大に振る舞いたいとかそんなチープな欲望のためじゃなく、より良いまち、景観、社会、文化、価値創造のためにそう思うわけです。そういう種類の人もいるんだってことをわかっていただけると大変幸甚でございます。そういうことで。